症例Report
『モルモットの臼歯不正咬合』
:2021. 12. 8
:豊島
症例
臼歯不正咬合 モルモット 4歳齢 雄
稟告
食欲不振、固形のものはあまり食べなくなっており、左下顎を触ると嫌がる。
身体検査
下顎臼歯の過長によりブリッジ形成。口腔内に軽度の流涎が認められた。
治療
食欲不振に対して、対症療法(鬱滞治療)を開
始した。臼歯に対しては目視可能な範囲でカットしたが、経過を追う毎に流涎の悪化がみられた為、十分なインフォームドコンセントのもと、全身麻酔下で臼歯全体の切削処置を実施した。
処置前
処置後
経過
本例は、臼歯全体の不正咬合が重度であり、臼歯の歯列や咬合面があまり保たれていないため歯冠をなるべく短く整えるように切削した。
本例は、最終的に心不全により亡くなってしまったが、約2ヶ月間隔の臼歯切削およびオーナー様の献身的な介護(毎日数時間毎の補助給餌)によって、2年にわたって状態を維持することができた。
まとめ
モルモットの臼歯不正咬合は、下顎臼歯(歯冠)が全体的に過長して、舌の動きが制限されることで採食や嚥下困難が生じて食欲不振につながると考えられている。また上顎臼歯の過長は頬粘膜を傷つけることで痛みを伴い、流涎や食欲不振を引き起こす。
モルモットでは、顎関節症を併発していることもあるため、歯科処置後に食欲が戻らない場合もあること、処置後も牧草や硬いペレットなどが食べられず、補助給餌が必要になる例も多い。いずれにしても根治は難しく、生涯にわたって付き合っていく必要があることを留意されたい。