症例Report
『リンパ腫』
:2015. 4. 15
:minami
症例
リンパ腫 <チワワ 13歳 去勢オス>
主訴
2ヶ月くらい吐き気が増えた 最近食欲も減退しているとの主訴で来院。
血液検査、超音波検査を実施したところ、血液中の白血球数が9万以上に増加しており、肝臓尾側に直径2cm大の腫瘤を認めた。
血液検査
末梢血液中では9割を超す白血球成分を大型リンパ芽球が占め、
核異型および核分裂像を確認した。
超音波検査
超音波検査にて肝門リンパ節の腫大を認めた。
診断
高グレードリンパ腫の白血病化 グレードⅤb(暫定)
リンパ腫は全身性の悪性腫瘍です。あるデータによるとリンパ腫で無治療の場合、ほとんどの犬が4~6週間後に死亡すると言われています。
リンパ腫の治療は根治(完治)目的ではなく、緩和目的になります。リンパ腫によって起こる悪影響、全身症状を改善して、リンパ腫とうまく付き合いながら、できる限り生活の質を維持していくことが目標になっています。
なお、今回の症例では急性リンパ球性白血病の可能性も完全に否定はできませんが、腹腔内にあるリンパ節腫大も考慮すると、リンパ腫の白血病化ではないかと暫定診断しました。
抗がん剤治療開始
第2病日よりCHOPベースの抗がん剤治療を開始した。食欲、嘔吐といった消化器症状は改善したものの、第33病日には頭部に、第40病日には下腹部に皮膚腫瘤を認め、ともに細胞診にて大型リンパ芽球が多数確認された。また、末梢血中の大型リンパ芽球も一時低下していたが、再度増数していった。
レスキュープロトコール開始
第60病日よりCCNUによる抗がん剤レスキュープロトコール治療を開始した。初回投与時に腫瘍溶解症候群と思われる症状を呈したが、その後の体調には異常は認められず皮膚腫瘤の消失を確認した。しかし、第78病日には右眼虹彩に腫瘤状病変が認められた。ステロイドの点眼を開始したところこの病変は消失した。第125病日、胸背部に皮膚腫瘤を認めたが抗がん剤の投与を継続した事で、徐々に消失した。体調には大きな異常は認められず、元気・食欲はあり、消化器症状や症状を呈するような骨髄抑制も認められていない。
その後
病気がかなり進行していた症例で、なおかつ治療開始後も皮膚や眼球に再燃する状況を考慮すると、長期コントロールは難しいのではないかと飼い主様にもお話をしていました。しかし、現在約1年が経過していますが、重篤な副反応もなく元気に暮らしています。こまめな来院と内服などは必要にはなりますが、このまま良好な生活の質を維持していけたらと考えています。
[ 現在 ]
また、現在では予後の指標や治療の選択という意味でもクローナリティ検査などを診断に組み込むようにしています。