症例Report
『耳介の腫瘍(扁平上皮癌)』
:2022. 3. 2
:菅野
症例
日本猫 10歳齢 避妊メス
主訴
左耳介先端部のホットスポット病変
経過
左耳介先端部にホットスポットが認められ、抗生物質およびステロイド治療を行ったが反応を示さなかった。
2ヶ月後、左耳介先端部に痂皮を有した1〜1.5 cmの腫瘍性病変が確認され、徐々に拡大していた。
上記以外、体表に腫瘍性病変は認められなかった。
細胞診
扁平上皮癌を疑う所見あり。
その他の検査
血液検査、超音波検査、胸部レントゲン検査において特記事項なし。
治療
細胞診において扁平上皮癌が疑われたため、左耳の断耳手術を実施した。
[切除前の状態]
[切除後の状態]
術後経過
摘出した腫瘍性病変の病理検査結果において扁平上皮癌であることが確定した。
術後1ヶ月経つが、創部の経過は良好である。
まとめ
扁平上皮癌は、表皮を形成する有棘細胞が腫瘍性に増殖する悪性の皮膚腫瘍である。皮膚の扁平上皮癌は紫外線と関連して発生し、鼻鏡・耳介・眼瞼に好発する。また、猫の耳介前部および耳介や眼瞼に発生した扁平上皮癌では、30 %の症例において多発性病変を形成することが知られている。腫瘤の発生部位により部分または全耳介切除術が推奨されている。口腔内に発生した扁平上皮癌と比べて、皮膚の扁平上皮癌は予後が良好である。