症例Report
『椎間板ヘルニア(多発性)タイプⅡ』
:2015. 11. 13
:西川
症例
椎間板ヘルニア(多発性)タイプⅡ <トイプードル 10歳 オス>
稟告
両側後肢のふらつき、腰背部の圧痛
椎間板ヘルニアとは
椎間板ヘルニアとは、背骨の間に挟まっている椎間板がつぶれてしまい、脊髄神経を圧迫する状態です。それにはハンセンⅠ型とⅡ型の2種類のタイプがあります。Ⅰ型は椎間板の中身(髄核)が外側の繊維輪を破って出てきてしまうタイプです。急激に発症することが多く、痛みを伴い、重度であれば後肢が動かなくなってしまいます。Ⅱ型は椎間板の外側部分である繊維輪自体が盛り上がってしまい神経を圧迫するタイプです。慢性的に経過することが多く、痛みや歩行のふらつきを伴ってきます。また軽度であれば症状がなく普通に生活していることもあります。
MRI検査
第11胸椎〜12胸椎左腹側から重度、第12胸椎〜13胸椎右から軽度〜中程度、第13胸椎〜第1腰椎左右腹側から中程度〜重度の脊髄圧迫所見が認められました。この所見より多発性椎間板ヘルニアのハンセンⅡ型が疑われました。
[MRI画像(矢状断像)]
T11-12,T12-13,およびT13-L1で中程度の圧迫が認められます。
[MRI画像(T11-12横断像)]
左腹側から中程度の圧迫が認められます。
治療
椎間板ヘルニアの治療には内科治療と外科治療があります。歩くことが可能であれば内科治療を行い、歩くことができない場合あるいは痛みが内科治療で軽減しない場合には手術を適用します。本症例では歩行のふらつきはあるが、歩行可能であったため約2か月間内科治療を繰り返したが、後肢のふらつきが徐々に悪化した為さらに腰背部の痛みが完全にとれなかった為、外科手術を行いました。 圧迫が重度であった第11胸椎〜12胸椎間は片側椎弓切除術を行い、圧迫していた繊維輪をできるだけ除去しました。第12胸椎〜第1腰椎間は背側椎弓切除術(脊髄減圧)を行いました。
[術中写真]
片側椎弓切除による孔が認められます。
[術中写真]
背側椎弓切除後。脊髄が露出しています。
術後3週目
歩行のふらつきは若干残るが、痛みは完全に消失しました。