症例Report
『消化管腫瘤−高グレード悪性リンパ腫』
:2017. 2. 15
:佐藤
症例
削痩 <雑種猫 15歳 避妊メス>
稟告
半年程でかなり痩せた。体調が優れないのかトイレで排尿しないことがあるとのことで来院。
触診
腹部の触診にて、膀胱の頭側に巨大な腫瘤を触知した。膀胱は触診上気になる所見はなかった。
超音波検査所見
小腸〜大腸にかけて、盲腸部あたりに消化管の腫瘍と思われる像を認めた。超音波ガイド下でのFNAを実施したが、有意な細胞は採取できず診断には至らなかった。通過障害はまだ発生していなかったが、今後起こりうる事を考え、切除を勧めた。
術中所見
腫瘍は、盲腸部にあり、周囲のリンパ節の腫大も認められた。周囲のリンパ節は、切除可能な部位のみ切除を行った。
診断
切除した消化管の一部および付属リンパ節を病理学検査に提出したところ、高グレード悪性リンパ腫との診断が出た。リンパ節や周囲の組織への浸潤も認められることから、今後の挙動が心配されるとのことであった。
治療
今回、消化管自体の閉塞には至っていなかったが今後十分に起こりうる状態であったため切除を実施した。高齢であることや軽度の腎不全も認められたため、ある程度手術のリスクがある状態での手術であったが、前日から点滴を実施したこと、十分な鎮痛を実施したことで麻酔後の悪影響も無く、元気食欲のある状態で退院することができた。
[術中写真1]
腸管に腫瘤を確認
[術中写真2]
腫瘤を腸管ごと切除
[術中写真3]
切断した腸管を吻合
考察
消化器型のリンパ腫は、通常FNAで診断できる事が多いが、今回の症例では有意な細胞が採取できず切除を行い、病理学的検査によってリンパ腫と診断された。細胞がうまく採取出来なかったことは、腫瘍自体が巨大になることで細胞の壊死や炎症が強かったためと推察された。今後は、化学療法を行うことをすすめ、検討してもらっている状態なので、相談の上決定していく予定である。