症例Report
『猫好酸球性硬化性線維増殖症』
:2017. 1. 14
:minami
症例
好酸球性硬化性線維増殖症 <雑種猫 13歳 去勢♂>
稟告
1年程前から便がゆるい。最近軟便、嘔吐の頻度が増えている。
身体検査
身体検査では触診にて、下腹部に棒状のしこりのような物が触知された。
超音波検査
消化管の一部で筋層が全周性に肥厚しており、周囲のリンパ節腫大も確認された。
肥厚部位の細胞診を行ったところ、好酸球主体の混合炎症が示唆された。
試験開腹
飼い主様と相談した上で、肥満細胞腫、好酸球性胃腸炎、好酸球性硬化性線維増殖症などを鑑別する為にも組織検査および必要であれば腫瘤の切除を目的とした試験開腹を実施する事とした。
開腹下では横行結腸を中心に結腸が硬く肥厚し、拘縮している様子であった。結腸およびリンパ節よりトレパン生検を実施し、閉腹した。病理組織検査では線維増生を伴った好酸球性炎症との所見が得られ、好酸球性硬化性線維増殖症を強く疑うものでした。
猫消化管好酸球性硬化性線維増殖症(Feline gastrointestinal eosinophilic sclerosing fibroplasia)
猫で稀に見られる胃腸や腹腔内リンパ節の非腫瘍性疾患で、好酸球を主体とした肉芽腫性炎症が腫瘤を形成し、食欲低下や嘔吐などを引き起こします。放っておくと消化管の閉塞や潰瘍、穿孔などを引き起こし、死に至る可能性もあります。しかし、この病気自体が最近になって提唱されたもので、明瞭な治療方法が分かってはいません。現在のところステロイド治療が最も良い成績と言われていますが、細菌感染も関与している可能性が示唆されています。
治療
開腹手術の傷が落ち着いてから、ステロイド剤による治療を開始し、嘔吐や軟便は改善していきました。また、超音波検査上では結腸の消化管壁の肥厚も軽減しているようです。現在は再発に注意しながらステロイド剤を減量し、経過観察を行っています。