症例Report
『義眼』
:2017. 7. 1
:西川
症例
義眼 <アメリカンコッカースパニエル 9才 オス>
経過
数年前より若年性の白内障を発症し、両眼ともに失明していた。最近になり右眼の充血、羞明を伴うようになり来院した。
眼科所見
右眼結膜充血、右眼球突出、両眼過熟白内障
眼科検査
フローレス試験異常なし、シルマー試験(右眼 23mm 左眼 21mm)異常なし、眼圧(右眼 62mmHg 左眼 18mmHg)
超音波検査
右眼前方水晶体脱臼が認められた。
治療
本症例は若年性の白内障から緑内障を併発した。2種類の眼圧降下剤点眼により、一時的に眼圧は下がったが、再度眼圧が上昇し症状の改善も乏しいため、飼い主様に義眼装着を提案した。義眼装着は、視力回復の可能性のない緑内障に疼痛の除去と美容上の外観を保つために行われる手術法です。 術後は経過良好で、まだ少し目やになどが出ますが、痛みは消失し、外観上も左眼に比べ特に違和感はありません。
[術前の眼球]
[義眼]
[術後(約一ヶ月後)の様子]
考察
視力回復の可能性のない緑内障に対しての別治療として眼球摘出術があります。動物にとって痛みがとれることは義眼装着と変わりません。しかし、飼い主様にとっては片眼の姿になってしまう愛犬を見るのはとても辛いことだと思います。義眼装着には角膜の重度な損傷がないことなど条件がありますが、適応になるのであれば飼い主様には必ず提供しなければならない治療であると思います。