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症例Report

『肛門周囲腺腫』

:2017. 12. 10
:西川

症例

 

肛門周囲腺腫 <ペキニーズ 未去勢オス 9歳齢>

 

肛門周囲腺腫とは

 

肛門周囲腺腫は、犬の最も一般的な肛門周囲の腫瘍であり、雄犬では発生頻度が第3位の腫瘍である。腫瘍は男性ホルモンが強く関連しており、多くは去勢をしていない犬で認められる。通常は去勢後に大きさが減少する。

 

稟告

 

他院にて、1年前より肛門周囲に腫瘤が認められていたが、手術を希望されず様子をみていた。その後、腫瘤がだんだん大きくなり、出血を繰り返した結果、全身的に貧血を起こし元気がなくなったとのことで紹介を受けた。

 

一般状態

 

食欲良好、活発性軽度に低下、肛門周囲腫瘤自壊

 


[術前の肛門周囲]

 

血液検査

 

中程度の貧血が認められた。

 

治療

 
肛門周囲全周にわたり多発性の腫瘤が認められた。未去勢であったことから肛門周囲腺腫を強く疑った。一般状態は比較的良好であったため、腫瘤からの出血を抑えるためにオムツなどで圧迫し、止血剤、鉄材の投与を行い貧血の改善をはかった。4週後貧血の改善がみられたために、去勢手術と同時に腫瘤摘出術を実施した。

 

 


[手術直後の肛門周囲]

 

その後

 
特に感染もなく、排便も良好で、貧血も改善された。 肛門周囲の手術では肛門括約筋を損傷することが避けられないため、肛門の反射が低下し、合併症として便失禁をおこすことが知られている。今回の症例は肛門周囲全周に大きな腫瘤が多発していたため、肛門括約筋をなるべく損傷しないように細心の注意を払った。 なるべく若い時期に去勢手術を実施することでこの腫瘍の発生を抑えられるので、去勢手術をさらに啓蒙していく必要性を再認識させられた。

 


[手術後約3週間の肛門周囲]

 

 

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