症例Report
『腹腔内巨大腫瘍(血管肉腫)』
:2015. 9. 8
:西川
症例
腹腔内巨大腫瘤(血管肉腫) <ミニチュアダックスフンド 7歳 オス>
稟告
他院からの転院。急にお腹が膨れてきて、食欲、元気がなくなった。頻繁の排尿
身体検査所見
可視粘膜が蒼白となっており、腹囲膨満、歩様のふらつきが認められた。
血液検査及び超音波検査所見
重度の貧血と重度の血小板減少、及び軽度の肝機能低下があり、超音波検査で中等度の腹水貯留、脾臓の腫瘍および腹腔内巨大腫瘍を認めたため、腹腔内腫瘍の破裂による血腹、それに伴うDICと診断した。
CT検査及び治療
本症例は時間の猶予がない緊急疾患であったため、直ちに輸血を実施し術前にCT検査で素早く手術計画をたて、そのまま開腹手術となった。脾臓の摘出手術および腹腔内の巨大腫瘍を摘出した。巨大腫瘍は膀胱を圧迫し、大網、尿管、結腸などとの癒着がありそれを剥がすのに多少の時間を要した。この癒着が頻尿の原因と考えられた。
[CT画像]
大きな腫瘍が膀胱を圧迫している
[手術所見]
綿棒で結腸との癒着をはがしている
[手術所見]
脾臓の大血管をシーリングしている
病理組織学検査結果
腹腔内播種を伴う血管肉腫
術後
DICも改善し順調に回復した。血管肉腫の腹腔内播種があった為、飼い主様には抗がん剤の投与を薦めたが、望まれなかった。その後1ヶ月で再発し、2ヶ月間症状もなく元気に暮らしていたが、残念ながら突如息をひきとった。血管肉腫は予後が悪く術後の再発あるいは転移からはほぼ免れない。しかし今回、飼い主様にはこの腫瘍に対する余命などのお話をあらかじめ説明することができたため、“2ヶ月間を今までになく密接な時間を共有することが出来た”と満足されている様子であった。