症例Report
『膀胱結石・尿道結石』
:2017. 2. 22
:西川
症例
膀胱結石および尿道結石 <グランパースパニエル 7歳 雄>
稟告
2-3日前から尿がでずらい。
超音波検査所見
膀胱内に、シャドーを引く膀胱結石様の陰影が認められる。
X線検査所見
膀胱および尿道部分に結石様の陰影が認められる。
尿検査所見
潜血(+++)、蛋白(+++)、尿沈渣にて無定形結晶と上皮(+)。
診断
上記の検査結果から、膀胱結石および尿道結石による尿道不完全閉塞と診断した。
治療
尿道の完全閉塞となると、体内で生成された毒素が体外に排泄されずに蓄積し、短期間で死亡にいたる可能性がある。よって、即日入院とし、翌日に膀胱切開と尿道切開による膀胱結石と尿道結石の摘出と、再閉塞を回避するために尿道造瘻術を行った。尿道を切開し尿道結石を摘出したのち、陰茎の尾側で皮膚に開口させて尿路を形成した。膀胱を切開したところ多数の結石が存在したため、摘出し洗浄を行った。症例は未去勢の雄であったことから、去勢も行い手術を終了した.術後血尿や術創からの出血が認められたものの少しずつ改善し、術後8日後に退院した。
[術中写真1]
尿道内の結石
[術中写真2]
摘出された尿道結石
[術中写真3]
陰茎尾側に尿道を開口した
[術中写真4]
膀胱内から摘出される多数の結石
尿石症とは
犬や猫に多くみられる結石としてはストルバイト結石とシュウ酸カルシウム結石があげられる。ストルバイト結石は通常アルカリ性の尿でできやすく、高率に尿路感染を併発している。シュウ酸カルシウムは高齢の雄犬に多く、通常酸性から中性の尿でできやすい。好発犬種は、ミニチュア・シュナウザー、プードル、ビション・フリーゼなどとされている。アルカリ性や酸性といった尿のpHは食事の影響を受けるため、現在多くのメーカーで尿石症に対する処方食が販売されている。個々の体質と合ったフードを選び、定期的に膀胱や尿のチェックを行うことで尿石症が改善することもあるため、飼い主様の注意深い観察と日々の定期健診が重要であると考えられる。