症例Report
『膣内腫瘤(平滑筋腫)』
:2021. 8. 28
:山本
症例
膣内腫瘤 <雑種犬 13歳 未避妊雌>
稟告
3日前から元気がなくなり、昨日から食欲がなくなった。陰部から血尿らしきものが出ている。他院で一通り検査してもらったが異常はないと言われた。
身体検査
腹部はやや膨満しており、陰部から血膿の漏出が見られました。
血液検査
炎症マーカーの上昇と低血糖が確認されました。
超音波検査
腹腔内に巨大な腫瘤を認めました。発生元を探したところ肝臓や脾臓、腎臓、膀胱などには異常が見られず、消化管や子宮などから発生した可能性が疑われました。
治療
血膿の成分を調べると細菌感染が確認され、血液検査で菌血症の所見も認められたため早期に治療が必要と思われました。しかし根本に腹腔内腫瘤が影響している可能性が高いため、飼い主様にリスクを説明した上で開腹して腫瘤の摘出を試みることにしました。
CT検査
超音波検査では腫瘤が巨大であるため由来が特定できず、術前にCT検査を実施しました。その結果、腫瘤は骨盤腔内から外陰部へと連続しており、子宮〜膣で発生していると考えられました。
外科手術
開腹して調べたところ子宮は正常と思われる形状をしており、それに連続する膣に巨大な腫瘤が確認されました。腫瘤は周囲の膀胱や尿管、一部の消化管に癒着していたため、子宮卵巣摘出後に少しずつ剥離を行いました。
[周囲に癒着している腫瘤]
[剥離後 右手に持っている部分が子宮です]
周囲の組織を剥離したところ腫瘤は膣内にある事が判りました。そのため膣を切開して内部を確認すると、腫瘤は膣内の一部から発生していました。
[膣を切開しているところ]
[開くと膣内に腫瘤が認められた]
尿道開口部に注意しつつ、出来るだけ基部で腫瘤を切除しました。その後切開した膣を閉創し、定法通り閉腹しました。
[摘出した子宮卵巣と膣内腫瘤]
術後の経過
手術の翌日から元気になり、翌々日から食餌も取れるようになりました。その後の経過も良好であったため入院して5日目に退院となりました。
病理検査の結果は『平滑筋腫』という良性の腫瘍であったため、術後の追加治療は不要となり治療終了となりました。
良性腫瘍であっても大きくなり過ぎると場所によっては命を脅かす存在になると感じた症例でした。