症例Report
『門脈体循環シャント(PSS)』
:2015. 4. 16
:nishikawa
症例
門脈体循環シャント <パグ 1歳 メス>
稟告
他院にて避妊手術前の血液検査でアンモニア値の上昇、総胆汁酸値の上昇が認められた。
CT検査
血管造影検査で腎臓頭側レベルよりシャント血管を認め、第12胸椎レベルで奇静脈へ吻合していた。肝外性の門脈奇静脈シャントと診断した。
CT3D画像
門脈シャントとは
正常な犬では、腸管から吸収されたアンモニアや細菌の毒素は門脈内を通って肝臓に入り無毒化されるが、この門脈と全身の静脈の間をつなぐバイパスとしての静脈が存在すると、肝臓で無毒化されるべき有害物質が肝臓で処理されないまま直接全身にまわってしまう。このため、さまざまな症状を引き起こし放置しておくと肝機能障害などで死亡してしまう大変怖い疾患である。主な症状は脳神経症状、食欲低下、嘔吐、下痢、血尿などですが、初めは症状にでないことも多い。
治療
門脈体循環シャントの治療は一般的には内科管理よりも外科手術が推奨されている。本症例は年齢も若く、一般状態も良く、単発性で肝外性のシャントであったため、外科手術による根治手術を行った。シャント血管の閉塞法はいろいろあるが、今回はアメロイドリングというシャント血管を閉塞させる専用のものを使用した。この特徴は血管の急激な閉塞を避け緩徐に閉塞をさせることができることである。
中央の白いものがアメロイドリング
術後
術後合併症などもなく、血液検査の値も正常になり完治した。