症例Report
『髄膜炎・脊髄炎』
:2016. 6. 24
:山本
症例
髄膜炎 <チワワ 11歳 去勢雄>
稟告
ここ数日元気、食欲が低下しており、震えてあまり動かない。お腹を持ち上げた時にひどく痛がる様子を示した。
検査
身体検査では下腹部を触診すると強い緊張が認められ、腹痛や腰痛の存在が疑われました。 血液検査にて急性炎症マーカーであるCRPの上昇が認められたため、一か月程前に発症していた膵炎再発の恐れもあり、オーナー様と相談した結果入院治療を行うことにしました。
入院経過
入院後容態はさらに悪化し、入院当初には見られなかった両後肢の不全麻痺を発症しました。腰痛が顕著にみられたため、椎間板ヘルニアなど脊髄に障害がある可能性をの疑いMRI検査を依頼することにしました。

[MRI検査]胸椎の脊髄に炎症を疑う所見が得られたほか、一部で椎間板ヘルニアが確認されました。また、脳脊髄液検査にて大量の炎症細胞が確認されました。
髄膜炎・脊髄炎とは
脳や脊髄を覆う髄膜の炎症を髄膜炎、脳から繋がる神経の束である脊髄の炎症を脊髄炎といいます。その病因は様々で、一般的にはウイルスや細菌などによる感染性のものと、非感染性のものに分類されます。髄膜炎や脊髄炎は臨床症状やMRI検査、脳脊髄液検査などの結果から診断されます。
治療経過
本症例は脳脊髄液の成分から感染の可能性は低いと判断し、抗炎症薬であるステロイドを用いた治療を行いました。治療を始めてから状態は良化し、両後肢の不全麻痺も徐々に改善が見られるようになりました。現在はステロイドの投与量を漸減しているところで、今後も注意深く見ていく必要があります。